過敏性腸症候群（IBS）とは？

日々の生活の中で、腹痛やお腹の不調に悩まされることはありませんか？
それが一時的なものではなく、繰り返し起こる場合、「過敏性腸症候群（IBS）」の可能性があります。

過敏性腸症候群（IBS）とは？

過敏性腸症候群（Irritable Bowel Syndrome, IBS）は、腸に炎症や器質的な異常がないにもかかわらず、腹痛や便通異常（下痢・便秘）を繰り返す疾患です。
特にストレスや食生活の影響を受けやすく、慢性的な症状が続くことで日常生活に支障をきたすことがあります。

日本人にも多い疾患

IBSは決して珍しい病気ではなく、日本人の約10〜15%がこの症状を抱えているといわれています。
特に20〜40代の働き盛りの世代に多く、通勤や仕事中に突然の腹痛や下痢に悩まされる人も少なくありません。

日常生活への影響

IBSの症状は、日常のさまざまな場面で影響を及ぼします。

• 仕事や学校での集中力低下（トイレに頻繁に行く必要がある）
• 外出時の不安感（トイレの場所が気になる）
• 食事の制限（特定の食品を食べると症状が悪化する）
• ストレスの悪循環（症状がストレスを引き起こし、さらに悪化する）

このように、IBSは単なる「お腹の調子が悪い」という問題にとどまらず、心理的な負担や社会生活の質の低下にもつながる疾患です。

しかし、適切な対処を行うことで症状のコントロールが可能です。
本記事では、IBSの症状・原因・治療法について詳しく解説していきます。

 

 

 

 

 

過敏性腸症候群（IBS）の症状

過敏性腸症候群（IBS）の症状は、単なる「お腹の不調」ではなく、慢性的に繰り返し起こるのが特徴です。
人によって症状の現れ方は異なり、大きく分けて「下痢型」「便秘型」「交替型」の3つのタイプがあります。

1. 主な症状

① 腹痛・腹部不快感

• 食事後やストレスを感じた際に腹痛が起こることが多い
• 排便すると痛みが和らぐことがある
• お腹の張りや不快感を伴うことがある

② 便通異常（下痢・便秘・交替型）

IBSは主に以下の3つのタイプに分類されます。

• 下痢型（IBS-D）

  • 突然の強い腹痛とともに下痢をする
  • 通勤・通学時や会議中など、トイレに行けない状況で不安が強まる
  • 食事の後すぐにトイレに行きたくなる

• 便秘型（IBS-C）

  • 排便回数が少なく、便が硬い
  • 排便後もすっきりしない感覚が続く
  • お腹が張って苦しくなることが多い

• 交替型（IBS-M）（混合型とも呼ばれる）

  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 体調や食事内容によって便の状態が変わる
  • 腹痛や膨満感が続きやすい

③ ガス溜まり・膨満感

• お腹が張って苦しい（ガスが溜まる）
• おならが頻繁に出る、または出にくい
• げっぷが多くなる

 

2. 精神的ストレスとの関連

IBSの症状は、ストレスや不安が影響を与えることが多く、「脳腸相関」と呼ばれる仕組みが関係しています。

• ストレスを感じると腸の動きが過剰になる → 下痢型になりやすい
• 緊張状態が続くと腸の動きが鈍くなる → 便秘型になりやすい
• ストレスが症状を悪化させ、症状がストレスを生む悪循環

このため、IBSの治療では身体的なケアだけでなく、精神的なケアも重要になります。

 

3. こんな症状があれば要注意！

次のような症状が3か月以上続く場合は、IBSの可能性が高いです。

・お腹の痛みや不快感が定期的にある
・排便の回数や便の状態が変化した
・下痢や便秘が続くが、検査をしても異常が見つからない
・ストレスを感じると症状が悪化する

IBSは放置すると日常生活に支障をきたすことが多いため、適切な対処が必要です。

 

 

 

 

 

 

過敏性腸症候群（IBS）の原因

過敏性腸症候群（IBS）は、単なる消化器の不調ではなく、さまざまな要因が絡み合って発症します。
特にストレスや腸の機能異常が関係していることが多く、生活習慣や食事の影響も大きいと考えられています。

 過敏性腸症候群の主な原因

① ストレス・心理的要因

IBSの発症・悪化に最も大きく関わるのがストレスです。

• 仕事や学校でのプレッシャー（試験・会議・人間関係など）
• 環境の変化（引っ越し、転職、季節の変わり目など）
• 過去のトラウマや心理的負担（過去の体調不良の記憶など）

ストレスがかかると、自律神経のバランスが乱れ、腸の運動が過剰になったり、逆に鈍くなったりすることで、下痢や便秘、腹痛が引き起こされます。

② 腸の運動機能異常（腸の過敏性）

IBSの患者さんは、健康な人に比べて腸が過剰に反応しやすい特徴があります。

• 腸の動きが活発になりすぎると、下痢や腹痛が発生
• 腸の動きが鈍くなりすぎると、便秘や膨満感が発生

特に、食事の刺激やストレスによって、通常よりも腸の蠕動運動（ぜんどううんどう）が不安定になり、症状が引き起こされます。

③ 腸内細菌叢（腸内フローラ）の乱れ

腸内には100兆個以上の細菌が存在し、善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスが取れています。
IBSの人は、この腸内フローラ（腸内細菌のバランス）が乱れている可能性があります。

• 悪玉菌が増えると → ガスが溜まりやすくなり、膨満感や腹痛を引き起こす
• 善玉菌が減ると → 腸の調子が不安定になり、便秘や下痢が起こりやすい

最近の研究では、腸内細菌の種類やバランスがIBSの発症に関係していることが明らかになってきています。

④ 食生活・生活習慣の影響

IBSは食生活や生活習慣によって悪化することがあります。

・高脂肪食・刺激物の摂取（揚げ物、辛い食べ物、アルコール、カフェイン）
・不規則な食事（食べ過ぎ、早食い、食事の間隔が長すぎる）
・睡眠不足や運動不足（自律神経が乱れ、腸の働きが不安定になる）

特に「FODMAP（フォドマップ）」と呼ばれる特定の糖質を多く含む食品は、腸内で発酵しやすく、IBSの症状を引き起こしやすいとされています。（例：小麦製品、牛乳、玉ねぎ、豆類 など）

 

 

 

 

 

 

過敏性腸症候群（IBS）の治療方法

過敏性腸症候群（IBS）は、命に関わる病気ではありませんが、生活の質（QOL）を大きく低下させる疾患です。
症状を改善するためには、生活習慣の見直し・食事管理・薬物療法・ストレスケアなど、総合的なアプローチが必要になります。

1. 生活習慣の改善

IBSの症状は、ストレス・食事・生活リズムの乱れによって悪化することが多いため、まずは日常生活を見直すことが大切です。

① ストレス管理（心と腸を整える）

IBSは脳と腸が深く関係する病気（脳腸相関）であり、ストレスが直接的に症状を悪化させます。

・リラックスできる時間を確保する（趣味、音楽、アロマなど）
・睡眠の質を改善する（規則正しい睡眠時間・寝る前のスマホ控え）
・ストレス軽減法を取り入れる（マインドフルネス・瞑想・ヨガなど）
・カウンセリングや認知行動療法（CBT）を活用する

ストレスをゼロにすることは難しいですが、ストレスとの向き合い方を変えることが、IBSの症状改善につながります。

② 食事の工夫（腸にやさしい食べ物を選ぶ）

IBSの方は、特定の食べ物で症状が悪化することが多いため、食事の内容を見直すことが重要です。

避けたほうがよい食品（高FODMAP食）

FODMAP（フォドマップ）とは、腸内で発酵しやすい糖質のことで、IBSの症状を悪化させる可能性があります。

高FODMAP食品（避けるべき食材）
・小麦製品（パン、パスタ、ラーメンなど）
・乳製品（牛乳、ヨーグルト、チーズ）
・豆類（大豆、レンズ豆、ひよこ豆）
・果物（りんご、梨、すいか）
・野菜（玉ねぎ、にんにく、キャベツ）

これらの食品を控えることで、お腹の張りや下痢・便秘が軽減することがあります。

低FODMAP食品（IBSの人におすすめ）
・米・もち麦・そば
・乳糖を含まないチーズ（カマンベール・チェダー）
・バナナ・柑橘類・いちご
・ほうれん草・トマト・ナス

自分に合う食品・合わない食品を把握し、少しずつ食事を調整していくことが大切です。

③ 便通リズムを整える（運動・水分・食物繊維）

• 水分をしっかり摂る（1日1.5～2Lの水）
• 適度な運動をする（ウォーキング・ストレッチ・ヨガ）
• 腸にやさしい食物繊維を摂る（オートミール・発酵食品など）

特に便秘型のIBSの方は、「水溶性食物繊維（わかめ・寒天・オートミール）」を意識すると、腸の動きが改善されやすくなります。

2. 薬物療法（症状に応じた薬の使用）

生活習慣を改善しても症状が強い場合は、症状に応じた薬を活用します。

① 腸の動きを整える薬（消化管運動調整薬）

• 下痢型（IBS-D） → ロペラミド（ストッパ）・ラモセトロン（腸の動きを抑える）
• 便秘型（IBS-C） → ルビプロストン・リナクロチド（腸の動きを促す）

② 整腸剤（腸内環境を整える）

• 乳酸菌・ビフィズス菌（ビオフェルミン、ラックビー）
• 酪酸菌（ミヤBM）

③ 抗不安薬・抗うつ薬（ストレスによる症状悪化を防ぐ）

• ストレスが強い場合 → SSRI・SNRIなど
• 不安や緊張による腹痛・下痢 → 抗不安薬など

薬物療法はあくまで補助的なものですが、症状を和らげるのに役立ちます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記載：おりたメンタルクリニック医師

 

---

 

 

■オンライン診療メンタルヘルス院について■

 

 

休職相談を扱う"オンライン診療専門"の

「オンライン診療メンタルヘルス院」もあります。

休職について悩まれている方は、お気軽にご相談ください。

 

 

 

---

 

 

 

 

 

 

 

---