メニュー

適応障害

 

「適応障害とはどんな病気なの?」

「適応障害の原因は何?うつ病との違いは?」

「適応障害の治し方を知りたい」

という疑問を抱える方に向けて、適応障害について解説していきます。

 

適応障害は、様々な物事によって、心や体が不調に陥る状態を言います。

現代のストレス社会において、日常的に色々な事に思い悩む方は多く、適応障害と診断される人は、精神医療の外来受診者における5〜20%と推定されています。

この記事を読み、適応障害について理解を深めましょう。

 

 

 

適応障害はストレス性の疾患

 

適応障害は、ストレス性障害(強いストレスによって生じる病気)の一つです。

人は自分にとって不快なこと、嫌なことが起こると、悲しみや怒りの感情が生じます。

この感情は、人それぞれ大きさが違うため、ストレスには個人差があると言えます。

例えば、上司に同じように叱られても、何事もなかったかのように受け流せる人もいれば、前向きにとらえて姿勢を正す人もいるし、大きな苦痛や混乱を感じてしまう人もいて、個人の反応は様々なのです。

適応障害におけるストレスとは、必ずしも「圧倒されるようなストレス」とは限らず、「日常のストレス」も原因となります。

ストレスが原因で日常生活や社会生活を送れなくなった場合に、障害とみなされます。

 

適応障害とは、「ストレスによって情緒面もしくは行動面の障害が出現しているものであり、気分障害や不安障害などの他の精神障害には該当しないもの」を言います。

 

つまり、

①何らかのストレスが原因によって生じる障害であること

②心の問題(例:気分の落ち込み、イライラ、不安など)や行動面の問題(例:社会的な行動がとれないなど)が生じること

③気分障害(例:うつ病など)や不安障害(不安が強くパニック発作が生じるなど)がないこと

を示します。

 

 

 

適応障害の症状

 

適応障害の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。

前述したように、適応障害では主に、心の問題と行動面の障害が生じます。

 

抑うつ気分を伴う

不安を伴う

不安と抑うつ気分の混合を伴う

素行の障害を伴う

情動と素行の障害の混合を伴う

特定不能

 

これらが適応障害の症状として挙げられています。

「抑うつ気分」とは憂うつな気分、気分の落ち込みのことを言います。

「素行の障害」とは社会的な行動がとれず年相応の振る舞いができなかったり、ルールを守れなかったりなどを示します。

小児の場合、不適応がしばしば指しゃぶりや夜尿症のような退行現象が行動に現れます。

「情動の障害」とは、感情のコントロールが難しく不安定で、簡単に泣いたり笑ったり怒ったりなど、感情の抑制が効かない状態に陥る場合を言います。

 

 

 

適応障害の診断基準

適応障害は、どのような基準によって診断されるのでしょうか。

精神障害の分野では、アメリカ精神医学会のDSM-5という、統計的な診断基準があります。

DSM-5による適応障害の診断基準は以下の通りです。

 

※以下のA〜Eのすべてを満たす必要がある。

A.はっきりとしたストレス因のため、ストレスが始まって3ヵ月以内に症状が出現する。

B.症状は以下のうち少なくともどちらかの証拠がある。

  1.そのストレス因に不釣り合いな提訴の症状、苦痛

  2.社会的、職業的などの生活に重要な領域の機能に重大な障害をきたしている

C.ほかの精神疾患では説明がつかない。

D.その症状は正常の死別反応では説明できない。

E.ストレス因やその結果が一度終結すると、症状は6ヵ月以上持続することはない。

 

該当すれば適応障害と特定

 ・急性:その障害の持続が6ヵ月未満

 ・持続性:その障害が6ヵ月またはより長く続く

 

また、6ヵ月以上継続する場合には、気分障害や不安障害への移行など、他の疾患の合併や進行を考えるとされています。

 

 

 

適応障害になりやすい人の特徴

適応障害になりやすい人にはどのような特徴があるのでしょうか。

適応障害と認知機能との関連を調べた研究で、適応障害になりやすい人の特徴について報告しています。

その研究によれば、適応障害と診断され、認知機能の検査を行った50名の特徴として、「作動記憶」と「処理速度」が低い傾向があると示されています。

 

「作動記憶」とは、情報に注意を向けて処理する短期間の記憶のことを言います。

例えば、「作動記憶」の能力が低い場合、注意集中を続けることが難しいため最後まで人の話を聞けない、約束を覚えておくことができずにトラブルに繋がってしまうなど、対人関係の問題を抱えやすいということが挙げられます。

また、「作動記憶」は、ストレスの高い状況下で低下しやすいことも影響しています。

 

「処理速度」とは、目で見た情報を素早く理解し、素早く反応する能力を言います。

例えば、目で見た情報を記憶することが苦手であったり、物事を素早く処理することが苦手、言い換えれば不器用な人という印象です。

また、「処理速度」は、うつ病や強迫症状との関連があることも報告されています。

 

※強迫症状とは:不安を呼び起こす好ましくない考え、イメージ、衝動が頭の中に繰り返し割り込んでくること

(例:玄関の鍵をかけ忘れていないか心配して何度も確認する、ドアノブに触れて病原菌がついたと心配し何度も手を洗うなど)

 

 

 

適応障害とうつ病の違い

適応障害とうつ病の違いは、どのように区別されるのでしょうか。

DSMの診断基準を参考にすれば、うつ病は

著しい抑うつ気分、あるいはほとんど全ての活動における興味または喜びの喪失のいずれか1つがあることに加え、

・強い睡眠障害や食欲低下の障害、自責感など含めて5つ以上のさまざまな症状を伴い、

・これが2週間以上ほぼ一日中、毎日続いている状態

と示されています。

 

適応障害の診断は、明らかなストレス因があって発症することが大前提とされていますが、しかし、うつ病でもストレス因があって発症することがほとんどであり、ストレスの有無だけで違いを区別することはできません。

 

また、適応障害とうつ病は、「抑うつ気分」の重さの程度で判断すると誤解されている場合もあります。

しかし、適応障害とうつ病は、診断基準を満たしているかどうかで判断する事になっているため、重症度で区別することは正しくないのです。

例えば、適応障害でも、ストレスがあり抑うつ状態が非常に重く、1日中泣いてばかりいるような状態が何週間も続いて、自殺願望もあるが、夜は眠れるし食欲もないわけではない、行動の障害も明らかではない人もいます。

これを考慮すると、重症度だけで判断してしまうと、適応障害にも起こりうる自殺願望などの症状を見逃してしまう危険もあると言えるのです。

 

 

 

適応障害の治療法

 

適応障害は、ストレスが原因(ストレス因)で起こる障害であることを述べてきました。

そのストレス因が取り除かれると、症状も速やかに消えることが適応障害の特徴なのです。

この特徴から、「そもそも治療の必要はないの?」という疑問が生じるかもしれません。

実際の治療法として、適応障害に効果のある薬はありません。

不眠や不安がある場合に薬が処方されることはありますが、あくまでも対症療法です。

また、抗不安薬が処方されがちではありますが、それは推奨されていません。

なぜなら、適応障害の治療研究において、残念ながら有効な結果が出ていないからです。

 

では、適応障害を改善するために何をすれば良いのか…

それは、「適応障害に陥った理由を自分自身で理解する」こと

そして、「適応障害に至った原因を取り除く」ことです。

 

順番にみていきましょう。

まず、ストレスの原因となる出来事や状況に対する自身の体験をどのように理解するかが重要となります。

自分の今までの人生の中で、同じような出来事や状況に陥った体験があるかどうかを思い出してみます。

その過去の体験では、どのように対処したのか、その時の心や身体の状態と今の自分の状態を比べて、何がどのように違うのかを考えてみます。

また、このような過去の体験は一度とは限りません。

これまでに繰り返し同じような体験によりストレスを感じているかどうかを探ってみます。

そうすることで、過去の体験から、自分がストレスに陥りやすい出来事や状況の傾向を理解することに繋がります。

まずは自身の傾向を知ることが、適応障害における改善の一歩であると言えます。

 

そして、ストレス因を遠ざけるために、環境を変える対策をとる必要もあります。

職場でのストレスを例に考えてみると、長時間労働なのか、上司からのプレッシャーなのか、担当している業務が自分に合っていないのか、いろいろな要因が考えられます。

それぞれの原因を除去するために、必要に応じて休職したり、異動を申し出たり、業務量の軽減をお願いしたり、環境を調整するように対応していくことが大切です。

 

 

また、近年、適応障害と認知機能の関連から、「認知リハビリテーション」という治療の有効性も報告されています。

認知リハビリテーションとは、前述した「作動記憶」の能力を高める訓練の一つであり、社会適応の改善に有効である可能性が注目されています。

 

 

 

まとめ

 

適応障害の症状や特徴、診断基準やうつ病との違い、治療法についてご説明致しました。

近年、職場のストレスによる休職や、学校への不適応による引きこもりや不登校といった問題が増加しています。

適応障害は、現代社会がもたらす経済状況の悪化やストレス社会といった様々な原因が影響しており、社会的な損失も大きいことが厚生労働省にて報告されています。

適応障害は、現代社会を生きる私たちにとって無視できない障害であると言えるでしょう。

当院が適応障害の理解と対処に貢献できれば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記載:おりたメンタルクリニック医師

 


 

 

オンライン診療メンタルヘルス院について

 

 

休職相談を扱う"オンライン診療専門"の

「オンライン診療メンタルヘルス院」もあります。

休職について悩まれている方は、お気軽にご相談ください。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME